※CAUTION※ ◎くず勿様が描かれていたニャンジョ作品から、勝手にインスピレーションさしていただきました。 【くず勿様の素敵元作品:http://t.co/7Mnfx2VG5M】 ◎アンジョルラスが猫です。 ◎グラアンというか、グランとニャンジョです。 ◎猫の生態があまりわかっていないし、現代フランス人学生の生活もわかってないのでいろいろおかしくてスミマセン。 (◎某S様のニャンジョさんもリスペクトしております) ニャンジョと! 廊下が濡れてしまった。 玄関から居間まで、雨粒で描かれたかわいらしい足跡が残っている。 足跡はリビングの手前でこんがらがって、今度は引き返してバスルームに続いていた。グランテールはタオルと猫用シャンプーを抱え、あわてて追いかける。さっきからずっと、逃げられてばかりだ。 バスルームのドアを開けたが、脱衣所にも浴室にも気配はない。いったいどこに隠れてしまったのか。すっかり困って、くせが強くとっ散らかった黒髪をばりばり掻いた。腕の中には、まるっこい猫のイラストのついたシャンプーが大人しくおさまっている。 『長毛種だから、もし汚れたら入れてやってくれ。猫だけど、意外と風呂好きだから、嫌がらないし』 コンブフェールの声を反芻する。 ホントに風呂好きなのか? 心の中で疑いの言葉をかけてみたが、当然答えがあるわけなし。 深いため息をこぼしたとき、ふいに視線を感じて、洗濯機に目を走らせた。さっと影が横切って、洗濯機と壁の隙間に滑りこむ。 いた。 グランテールはゆっくりしゃがんで覗きこむ。 洗濯機の隙間に、例の猫が挟まっていた。金色に輝く美しいはずの毛並みは、散歩中にあたった雨に濡れてしょんぼりしている。 「おいで、アンジョルラス。怖くないよ。お風呂、好きなんだろ?」 警戒を解きたくて、文字通り猫撫で声で呼びかけた。でも彼は相変わらず、ちっとも心を開きそうにない。ロイヤルブルーにきらめく瞳は警戒心をたっぷり含んで、睨むようにこちらを見上げてくる。 「ほら、びしょ濡れだし、頭に葉っぱもついてるよ。お風呂に入ろう。君が風邪でもひいたら、俺が怒られるんだぜ。……アレ? ネコって風邪ひくのかな」 注意を引きつけようとタオルを振ってみせたが、まったく効果はない。隙間に手をつっこんで捕まえようと試みるも、「ニャアアアァァ」とけわしい声が浴びせられる。猫の言葉はわからないが、「よそへ行け!」と言われた気がした。 こうなっては埒があかない。仕方がないので、バスタオルを洗濯機のそばに置いてやり、とっとと自分の服を脱いで、バスルームに入っていった。 猫はコンブフェールの家で飼われている。 名前はアンジョルラス、3歳、オス。血統書のついたセレブ猫。やわらかく、素晴らしくさわり心地の良い猫で、整った顔立ちと、知的な光をたたえた青い瞳が印象的だ。 近所のコンブフェール家で初めてその姿を見つけたとき、グランテールは目を奪われた。だがそのとき彼はかなり酔っていて、酒臭いままアンジョルラスを無理やりつかまえて腹を撫でまわしたのだ。アンジョルラスは当然ひどく嫌がり、殺意のこもった猫パンチを食らわせてきた。それ以来、たいそう嫌われたようで、遊びに行っても警戒してさわらせてくれない。 今日は家族旅行に出かけたコンブフェールに頼まれて、ひとりぼっち残されたアンジョルラスを預かっているのだが、この調子だと、仲良くなるための道のりは長そうだ。ついたため息はシャワールームにむなしく反響した。 だがシャワーを浴びてドアを開けたグランテールは、心底驚いて叫びそうになった。 バスマットの上にアンジョルラスがちょこんと座っていたのだ。うっかり踏みつけそうになって慌てて避けたが、そのはずみでバランスを崩し、派手によろめいて壁に手をついた。 アンジョルラスは素っ裸のグランテールのそんな醜態をじっと見つめている。 「ビックリしたな! 危うく踏んづけじゃうとこだよ。どうしたんだい?」 「にゃあ」と少々遠慮がちな鳴き声が返ってくる。じっとこちらを見つめるので、なんとなくぴんときてしまった。 「……もしかして、風呂に入りたいのかい?」 生乾きの毛並みはぐちゃぐちゃだった。どんな道を散歩してきたのか知らないが、葉っぱもまだくっつけたままだし、洗濯機の隙間にもぐりこんだせいで埃だらけだ。 猫を洗うのは初めてだったので、コンブフェールに言われたとおり、なるべく慎重に洗ってやる。アンジョルラスは緊張している様子で、じっと動かずにいたけれど、泡を濯がれるときには、気持ちよさそうに目を細めていた。タオルで乾かしてやると、ふわふわの綺麗な毛並みが戻ってくる。 風呂がおわると、ひとりと一匹でテレビを見る。さっきまでの敵意は見せないが、まだすこし警戒しているらしく、グランテールの座るソファからすこし離れ、部屋の隅でおとなしくしている。 テレビでは有名なアクション映画がやっていた。内容なんてほとんどない、人気シリーズの3作目だ。 画面が派手に色や光を飛ばすたび、アンジョルラスがびっくりしたように目を丸くしたり、首をひねったりするのがやたらと楽しい。アンジョルラスを見て笑うと、彼にはそれがわかるのか、ちょっとむっとするのがまたかわいらしかった。 この手の映画を観て、「楽しい」なんて思ったのは、初めてだった。 映画が終わるろには、アンジョルラスは眠ってしまっていた。エンドロールが流れる中、預かった専用のベッドをソファの横に置いてやる。抱き上げる前に彼は自分でそれに気がついて、のろのろベッドの中に入り、丸くなって寝息をたてた。 「おやすみ、アンジョルラス」 優しく囁いて、グランテールは部屋の灯りを落とした。 あたたかいものが頬にふれて、グランテールはゆっくり意識を浮上させた。なにか、生き物の気配がする。 夢から抜け出すように瞼を開く。 部屋はまだ薄暗い。時計を見ようと枕元に手を伸ばしかけたが、その手は途中で止まった。 傍らに、フワフワしたものが丸くなっている。驚いて目をしばたたいた。アンジョルラスがすやすや眠っているのだ。その無防備な寝顔に、ぐっと胸がつかれる。 きっと寝ぼけて、コンブフェールのヤツと勘違いしてるんだな。 グランテールにはすぐに分かった。毎朝こうしてご主人のベッドにもぐりこんで、甘えているんだろう。コンブフェールが少しうらやましくなった。今なら許されるだろうと、指を伸ばしてちいさな頭をそっと撫でててみる。 「……はやくご主人が帰ってくるといいな」 するとグランテールの声が聞こえたのか、アンジョルラスが長いまつげをゆっくり持ち上げる。そして大きな紺碧の瞳に、はっきりとグランテールの姿が映った。 とっさに手をひっこめる。相手がグランテールだと気がついたら、怒るか逃げ出すかだろうと思ったのだ。けれどアンジョルラスはしっかりグランテールを見つめてから、えも言われぬ可愛らしい声で一言ちいさく鳴いて、また丸くなり、目を閉じたのだ。 腹の底から、いままでにないあたたかい感情がわきあがってくる。グランテールは再び指先でそっとふれてみる。ゆっくり背や腹の和毛を撫でてやるが、怒るどころか、気持ちよさそうな顔で眠っている。 安心しきった寝顔をながめながら、彼もまた瞼をゆっくり落とした。 ぬくもりを分かちあいながら眠るひとりと一匹は、もしかしたら、同じ夢を見ていたかもしれない。 そののち、グランテールはうっかり寝坊してバイトに遅刻し大目玉をくらったのだが、それはまた、別のお話。 (2013.07.30) |
ニャンジョがあまりにかわいすぎたので我慢できませんでした。
もっと、ショタジョルラスにネコミミついてるイメージでかきたかったんですけど…
どうみてもただの猫です。
どうか、かわいいくず勿先生の絵で再生していただけたら幸いです。
猫ってお風呂入らないかな…と思いつつ書いてしまいましたね……猫飼ってる方スミマセン…;;
タイトルはもちろん「よつばと!」のパク…いやリスペクトです。
そしてラスト一文の元ネタが分かる方は握手してください。
妄想萌え燃料をくださったくず勿様、誠にありがとうございました!!