時間について もうずっと昔のことだ。 「かつら」のことを「ヅラ」という、そんな知識ばかり仕入れるのが早かった俺は、すぐに桂の顔を見た。 桂はというと、俺の考えてることなんて、全く思いつきもしない様子だった。俺は次の瞬間、嬉々としてそのあだ名を付けてやった。桂は顔を真っ赤にして怒った。 「ヅラ」 「ヅラじゃない桂だ」 あの時と変わらないやりとり。 あの時から、俺たちの関係は随分と変わったけれど、この時だけ俺たちは時間を巻き戻すことができる。 「銀時」 まだ薄暗いこの部屋で、桂の髪を梳いてやった。俺の指はがさつだったのか、桂は少し嫌がった。 伸びてきたとはいえ、未だ短い髪。 一番最後に抱いた時、まだこの髪は長かった。 幼い頃には何も背負うことなく自由に生きていた俺たちは、いつの間にか荷物を背負いすぎていた。 「ん・・・ヅラ」 呼んで、指を絡めると、素直に握りかえしてくる。 「銀時・・・」 こいつは少し、背負ったものを忘れたほうがいい。 俺ならこうして、何も背負っていなかった頃へ時間を巻き戻してやれる。 俺はというと、こいつが呼ぶ「銀時」という音に、全てを忘れられる。 空が明るくなるまでは、俺たちの時間は止まったままだ。 |
すごい昔に書いたやつですよ。もう恥ずかしいから読み返してないですすみません〜
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